中国山陰地方では、主に岡山県笠岡市〜広島県福山市で親しまれている老鶏。
こちらでは親鳥と呼ばれ、笠岡市ではあまりの親鳥愛から濃厚シンプルな醤油ラーメンである笠岡ラーメンまで生まれました。そして、隣の福山市でもちょこちょことスーパーに並ぶくらいには定番の商品になっています。
老鶏を食べる文化は日本全国でも割と散見され、九州ではタタキとして生食されるケースもあるとか。また、福井県から日本全国に広がった焼き鳥チェーン秋吉でも定番メニューです。瀬戸内海の向こうにある香川県でも親しまれた食材で、焼き鳥屋などでは親鳥か若鶏かを聞かれるくらいだそう。
一方で、食べない地域は全く食べないのも親鳥の特徴です。特に関東圏に馴染みが薄いようで、東京やその周辺のスーパーマーケットでは確かに見かけなかった記憶があります。
そのためか… 埼玉県から親鳥が攻めてきた。
スーパーに並ぶのは丸々の親鳥318円。あまりに関東で価値がないのか、精肉すらされていない丸の親鳥が最近ここ広島県でも売られているようです。
ちなみにこの親鳥…関東にクリスマスシーズンに出現したとかで、安い丸の鶏は雰囲気満点と買ってしまった人たちもいたことでしょう。
しかし、親鳥の身質の特徴はその固さ。これが美点でもあり弱点でもあります。
実際、ヤフー知恵袋などでは「柔らかくしたいから方法教えて」みたいな質問も出ていますが…
親鳥は固いから美味しいのであって、柔らかすぎると親鳥である意味がない。実際に一度低温調理してみましたが、もう二度とやらないってくらい中途半端でゲンナリしました。
とはいえ、単に丸焼きにすると固すぎて食べられないのも事実なので、ここでは”固い肉をそれなりに食べやすくする方法”で調理していきます。
これが丸々親鳥一羽ぶん。
スーパーで売っているのが不思議なくらい業務用。やってある処理は、首を落として羽を抜き内臓を取り除いただけ。もしかしたら、関東圏では精肉する手間すらも惜しいくらいの食材なのかもしれません。
これを出刃で捌いていきます。 途中の写真を載せると、どこかのクマを捌いたあの人みたいに炎上するので載せませんが、出刃でそれなりに捌けますね。
鶏の骨くらいなら、関節に当てて切り割ると思ったほど簡単に切り分けることができます。 構造も魚とほとんど変わらないので、魚捌ける人なら初めてでも戸惑いは少ないと思います。
これが、ガラと肉を分けたところ。
胸周辺の肉に親鳥らしさはあまりないが、かしわの辺りは濃いルビー色に黄色がかった脂が”らしい”です。
これをさらに小さく切っていきますが、コツは[筋を断つように切る]こと。親鳥に限らず、固い肉では鉄板の調理法です。
今回やった料理は主に3種。
親鳥のかしわを細く切り、醤油・みりんをベースに砂糖で甘辛くしたもので強火で煮た料理を一つ。
親鳥の炒り煮
ギュムギュムした強い噛みごたえ、そして噛めば噛むほど強い鶏の旨味がどんどん出てくる！お酒がススムくんです＼(^o^)／
そして…この親鳥の炒り煮、実はおかずにも良いのですがその際に一工夫。とはいえ、御飯の上に炒り煮をかけ、濃い出汁と生卵をかけるだけ。
老子(おやこ)丼
これ…超旨い！しかも手軽！
甘さと醤油辛さが強い炒り煮の汁には、すでに親鳥の出汁がバンバンに出ています。この濃さをご飯と卵がまろやかにしつつ、やはり噛むと親鳥の旨味がどおおぉぉん！
炒り煮だけで食べても美味しいですが、ご飯と卵を加えるとまた違った美味しさが楽しめます＼(^o^)／
次に、ガラを処理していきます。 ガラを出刃包丁で叩いて骨髄をむき出しにし、これにしょうが・ネギ・玉ねぎを入れて中火で煮込みます。
どんどん水が減っていきます。 半分くらいになって、味がOKなら完成。
鶏白湯スープ
これがもう一つのベースになります。
かしわ3割に胸肉7割を包丁で荒く叩き、これに片栗粉を入れて混ぜてつくねにします。
鍋の出汁は、もちろん鶏白湯スープを入れて…
親鳥つくね鍋
胸肉と片栗粉はプリップリで、かしわはコリッコリ！それでいて鶏出汁が濃くて旨い！親鳥を使う鍋としては、歯が弱くても食べやすい上に、若鶏なんかで鍋するより断然旨い。
このつくね、多分揚げても美味しいと思う。最高です＼(^o^)／ もちろん雑炊も最高でした！
そして、ガラスープを醤油＋炒り煮の出し汁で割り、ここに麺を投入し、上にネギと炒り煮の肉を盛り付けると…
自家製親鳥醤油ラーメン
結構本格的な味＼(^o^)／
ちなみに、少し甘めにしてうどんを入れたり、塩のしょっぱさだけを足してそうめんを入れたりするのもとてもいいです。
これだけ楽しめて、実に
・炒り煮 約3食分
・鍋 約2食分
・ラーメン 約3食分
の肉とスープが取れました。
たった318円の親鳥一羽から、ここまで美味しさが楽しめるなんて＼(^o^)／ 節約して美味しくたくさん食べられるというスーパーな食材、親鳥はとてもおすすめです。
食べる地域と捨てる地域がはっきり別れる親鳥ですが、調理さえ間違わなければここまで安く美味しく食べることができますよ。
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