【広島県西部】ちょっとマイナーな広島名物”夜泣き貝”

広島県の食べ物それも海産物といえば、まずカキを思い浮かべる人が大半だと思います。実際に県が推しているので、目に止まる機会も多いでしょう。 


しかし、広島県の貝で美味しいものはカキだけではない。 


 広島県人は古くからニシ類を好み、福山市周辺では大型のアカニシ(現地ではニシ貝と呼ぶ)などをスーパーで見かけます。そして、広島県西部では昔から小型のナガニシ類を好みます。 


この小さなナガニシのことを広島県ではヨナキガイ(夜泣き貝)と呼び珍重します。 


昔は多かったのですが、あまりの旨さに乱獲され尽くしたため瀬戸内海では激減。今では、この貝をあまり珍重しない山陰からも取り寄せているものの…その値段は時にキロ10000円を超える高級食材へ。 


今ではもうそこら辺で採るなど不可能で、見つけても大抵は漁業権がかけられていると思います。スーパーでも長らく見ないものになったので、どんどん馴染みがなくなっているヨナキガイですが… 


なぜか安芸高田市の八千代産直市場には置いてあるんだな!  


まぁこれ見たワタクシもびっくりしたけどな! 


なぜか山の中で見つかるヨナキガイ。仕入れの人がかなりツウなのかもしれません。


この貝、捌くのも面倒くさいし食える部分も少ない。コスパコスパと騒いでいる若者には理解できないレベルの苦労と歩留まりです。  


まず、ヨナキガイに限らずニシの類全般に言えることですが、ワタ(内臓)は苦すぎて、とてもサザエのようには食べられません。余談ですが、アカニシをなんの処理もせず熱湯に放り込んで茹でると、とても食べられそうにない濃い紫色の汁が鍋を占領します。 


では、ほじくり出して食べるしかないのですが、ヨナキガイに限らずニシの類は全般的にほじくり出すのが難しい。アカニシくらい大きければまだ殻からくり抜くことができますが、ヨナキガイは小さすぎて無理。 


ちなみに、アカニシでもワタクシは、家で食べるときはくり抜いたりしません。面倒なので。


くり抜かなかったらどうやってほじくり出すよのさ!って話ですが、答えは簡単。殻を破壊すればいいのです。しかし、ヨナキガイに限らずニシの類の貝殻はめちゃくちゃ硬くてとても素手でどうにかなる代物ではない。 


 というわけで、広島県のニシ貝フリークは… キッチンにハンマーを常備しています(うちだけかも)。


 ハンマーで殻を破壊し、足の部分のみを取ります。当然ニシなのでよだれを4倍以上強くしたようなヌメリがありますが、これを塩で揉んで落とします。アカニシよりはしつこくないので、洗いすぎに注意。 


 ある程度ヌメリが落ちたら、そのまま食べ…られません!  


ニシの類は、唾液腺にテトラミンという毒を持っています。これは神経毒の一種で、加熱しても変性しないものです。摂取しても死に至ることはないですが、めまいや頭痛、船酔いに似た症状などを発症することがあります。また、味も苦く、除去せずに食べる必要性は一切見当たりません。


 唾液腺のある部分を包丁で開き、中を捨てて、もう一度塩揉みして流します。 


 ヨナキガイの刺し身 (剥き身)


見た目はひどいなこれ(笑)家で呑み助が食う場合、こういう味も素っ気もない盛り付けになりがちなのは、こんな小さな貝を砕いて洗って捌いて…と、割と労力がかかるからということで。  


しかし、一口食べたらその苦労も吹っ飛びます\(^o^)/ 


コリコリした肉質から噛めば噛むほど出てくるのは、通常の貝にはない甘さ。貝甘い味なのです。 


臭みなどなく、貝にありがちなクセも少ない。コリコリ濃厚な甘みが口の中に広がって幸せそのもの。


 個人的には、巻き貝食うならヨナキ>アカニシ>サザエの順ですね。 むしろカキより好きかもしれない。







 広島県では知る人ぞ知るゾーンに到達しつつあるヨナキガイ。この貝甘さは酒に合わせて最高で、広島県ではある程度の年齢層を中心にひっそりと楽しまれている美味です。


貝好きじゃなくても、アレルギーがなく貝を生食できる人なら、ヨナキガイの刺し身はきっと美味しいはずです。 県外の人も、居酒屋で見かけたらぜひ食べてみてください。


もちろん、お店で出されるものはちゃんときれいに盛ってありますのでご安心を。

美味しいもの食べたい!in中国山陰

中国山陰5県で見つけた美味しい産直食材・地グルメを綴っていきます。