【広島県尾道市】デ ベ ラ メシ

広島出身の漫画家さんは、どうも青年漫画を書く人が多い気がします。他県で読むと懐かしさがこみ上げる[カバチタレ!]シリーズや[極悪がんぼ]シリーズも呉市の漫画家さんだし、[僕はビートルズ]も広島の漫画家さんです。


最近一部で話題の不思議系で、[刻刻]を描いていた堀尾省太先生も広島県出身です。現在は第2弾にして福山市から尾道市を舞台にした[ゴールデンゴールド]を連載中。


作品の至るところに広島を醸し出す地元あるあるな演出が多数。”TSS味なプレゼント”のCMが全国版ではなかったことに気づいた大阪での夜は懐かしい。


舞台は因島付近の小島のひとつ寧島(この島のみフィクション)で起こる、フクノカミによってもたらされる富とそれに翻弄される人達を描いた物語。


その中に登場するフクノカミの大好物がでべら飯なのです。


でべら飯とは作中で、広島県の寧島で出てくる郷土料理にしてフクノカミの大好物です。コイツが唯一要求した料理がでべら飯だし、見知らぬ人の前に現れた時もでべら飯を作っているシーンでした。


お前どんだけデベラ好きなんだよ。


さて、そのデベラとはなんぞや…ですが、

デベラはタマガンゾウビラメの方言で、手の平大の平たい魚という意味。手平→テビラが訛って根付いたものです。顔は鶴瓶さん系。

昔は至る所で安く見かけたものです。また、広島県の上にある島根県でもエテガレイ(ソウハチガレイ)の干物は昔から作っており、いわゆる[大地魚干し]は身近で普通にあるものとして認識していました。他県には意外とないけど、それも帰ってきて思い出すくらい普通にあるもので特別感はひとつもない。


それくらい身近なものですが、でべら飯は聞いたことがない。


デベラはポジションとしてはスルメのようなもので、大人達がこれを炙って酒をやるものでした。ちょっとだけ、日本海のぶっといカレイの干物と焼き方は違いますが。


まず、デベラの表面を木槌やらすりこぎ棒やら金槌やら一升瓶の尻…なんでもいいので表面をトントン叩き、表面を壊すことなく中骨を叩き割る。

それを焼く。

焼くのはトースターでもフライパンでもなんでもいいが、ベストはダルマストーブです。しかし我が家にストーブはないのでコンロで普通に焼きました。


本来ならこれを、同じくダルマストーブの上で燗をつけた日本酒と洒落こみたいが、熱燗を熱するストーブは我が家にないので、普通に冷酒を用意しました。


切るのはキッチンバサミがやりやすいが、瀬戸内エリアに住む(アル中の)プロの方々はこれを「アチチチ…」と呟きながら素手で割いて食べる。廃退的かつ正統派の食べ方です。

とても旨いです。カレイやヒラメ独特の日向くさい味わいに、少し苦味を伴う珍味系の味。酒がなくなる旨さです。


瀬戸内海の小魚類は基本的に骨まで食べられるが、これも同じく。先に叩いたために少々柔らかくなり、歯応えが固い可食部の一部くらいにまでなります。残るとしたら頭くらいでしょうか。


しかし、ゴールデンゴールド作中ではこれを飯に乗せて炊くという記述がある。初めて見るものですが、実に面白い。私もやってみよう。


デベラは頭をハサミで切り落として一口大に切ります。炊くと骨の強さが復活するので、でべら飯を作る場合は大きめの骨は全て取り除いたほうがいいでしょう。


骨を外したデベラは、香ばしさを出すために軽くフライパンで炒ります。

塩を2つまみ投入してこれを普通に炊く。中骨は出汁を期待して入れてみました。

でべら飯の完成。

正直、祖父のツマミを分けてもらってしか食べたことがないデベラ。こうして料理になるのも初めて見ましたが…


………なかなかいいなこれ。


強い味ではなく、米の味や香りに初っ端は負けつつ奥で漂うデベラの滋味。もたっとした甘味と干物特有の香りが美味しいが、ところどころ珍味らしく淡く好ましい苦味もある。


カレイやヒラメの干物は総じてほっこり系の味ですが、若干珍味っぽい味も混じりとても美味しい。


ただし、やはり残念なのは薬味や調味料をかけると控え目なデベラが完全に死んでしまう可能性が高いこと。そして、調味料として最も良かったのは塩と味の素でした。


というわけで、味の素を少々加えた米飯を少量の塩で握り、おにぎりにして表面を軽く炙る。

あ…これは旨い!


おにぎりを握る際につけた塩が程よい調味となり、これがデベラの甘味を押し上げてきます。フクノカミのようにひょいひょい食べてしまうのも納得。


おつまみのはずが、ご飯にも弁当にも使える万能食材に。アル中御用達のイメージがあったデベラですが、万人に美味しい普通の食い物ということを再発見できました\(^o^)/


このでべら飯、作者の堀尾省太先生が取材の際に尾道の乾物屋で教えてもらったものらしいのですが、広島県民のはずのワタクシ全く知りませんでした。


デベラの干物は現在、お土産になるレベルのものは高級品と化し、手に入りにくいものとなってしまいましたが、地域のスーパーなどでは安価なデベラガレイ(鰈)バージョンがあります。広島県を旅行する際は、ぜひ地場のスーパーなんかも見ていってほしいなと思います\(^o^)/


そして、ゴールデンゴールドはとても面白いマンガです\(^o^)/長く見ているとフクノカミがキモカワに見えてくるのが不思議。


もちろん、詳しいレシピもマンガに描いてあります。 

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